佐藤小夜子DANCE LABORATORY 2016公演 『そこを右に曲がると…いや左かもしれない』
2016年3月12日 名古屋市東文化小劇場
<批評>
芸術批評誌[リア] no.37 より
ナゴヤ劇場ジャーナル 2016年5月号より引用 ●見応え十分、紆余曲折の人間模様 13人のダンサーが、それぞれ大きな「白い枠」を手にして60分間踊り続けた。そのパワーを一番に評価したい。佐藤小夜子DANCE LABORATORY公演「そこを右に曲がると…いや左かもしれな」(3月12日・東文化小劇場)だ。 佐藤によれば、白い枠は「各自のアイデンティティーであり、テリトリーである」という。枠は人生のように紆余曲折して持ち主を慌てさせたり、他人に共有されたり、放り出されたりもする。まさにアイデンティティーである。 終盤、奇妙な紳士が登場しダンサーたちを先導、全員の動きが統一される。60分の上演時間を、戦後の日本の60年だとすれば、この紳士は「日本の高度成長期の象徴」ではなかったか…。ちなみに紳士を演じたのは、現代舞踊界の重鎮、関山三喜夫(客演)である。 客席からはクスクス笑いがもれる。漫画チックなユーモアに満ち、昭和の風情を感じさせるのが佐藤のステージである。ラストにはエノケンこと榎本健一の歌う「私の青空」が流れた。なんとも憎い選曲である。 <上野茂>