第3回 佐藤小夜子 DANCE LABORATORY 公演『汽車にゆられて』
2001年11月9日〜11月10日 名演小劇場
<批評>
いい舞台を見せてもらった。今まで見たことのない、独創的なパフォーマンスだった。佐藤小夜子の現代舞踊公演「汽車にゆられて」だ。現代舞踊公演には期待を裏切られることが多いが、この公演には確信があった。地元演劇の第一人者、木崎裕次の演出作品だったからだ。 会場に足を踏み入れた瞬間から驚きがあった。壁面を、むき出しにした舞台。上手には異様なオブジェが、まるで生き物のようにうずくまっている。舞台の背面には2階へ通じる狭い階段が取り付けられている。まるで「オペラ座の怪人」のセットのようだ。名演小劇場を見直した。 佐藤は汽車にゆられて旅立つ慰安婦(らしい)。薄物をまとった彼女の美しさにも驚いた。「こんなにいい女だっけ…」。これも演出家の手腕であろう。絶望、不安、怒り…やるせない、女の人生が、佐藤のダンスからあふれ出る。途中から、うずくまっていたオブジェが天井までつり上げられた。意思を持つ動物のようであり、運命、魂のようにも感じられた。 欲を言えば切りがない。佐藤自身にも、反省点は山ほどあるだろう。だが舞踊家が、演出家の協力を得て、独創的な公演を成功させた功績は大きい。客席には佐藤の同業者、数多く見られた。彼女らが(佐藤の舞台から)どんな影響を受け、次にどんな公演を行うか、大いに期待したい。それにしても佐藤は色っぽかった…。 (上野茂/名古屋タイムズ)